vol.10「キーワードはこれ、何焼きですか」
僕は何度もこれを繰り返し聞いちゃった。聞けばその時は「そうなんだ」と思うけど日にちが経つと、又、聞いちゃう。
例えば、九谷焼の産地、石川県に住んでいる作家さんがいる。石川県に住んでる作家さんだから、単純にその作品は九谷焼きだと思う。でも、不安だから聞いてみる。「これ九谷焼だよね?」ちょっと難しい顔をしながら「違うよ」と答える奥さん。(難しい顔をするのは嫌とかじゃなく、何にもわからない初心者に対して、どこまでをどのように 説明するか苦慮するから。)結局、奥さんは丁寧にほとんど全部を「どばぁ」っと説明する。
日にちが経ち、違う九谷焼の作家を見て、また聞く。「これ九谷焼だよね」「そうだね」
またまた、日にちが経ち違う九谷焼の作家を見て、また聞く。「これ九谷焼きだよね、五色(ごしき)まで使ってるもんね」(五色→九谷焼きの特徴。赤、黄、藍、紫、緑の5色)
「違うよ」
「なんで?」
石川県で作っても、手作りでも、五色を使っても、それっぽい紋様を描いても、=(イコール)九谷焼とはならない。つまり九谷焼の流儀(?)にのっとって、色々なポイント全てが一致しないと九谷焼とはならない。(二つめの質問で「そうだね」と答えたのは、偶然、伝統工芸の作家さんが作ったものだったから。)
伝統工芸は別として「作家もののうつわ」に対して「これ何焼きですか」と聞いてきたら、まず、間違いなくその人は「作家もののうつわ初心者」という事になる。
初心者であることを隠そうが言うまいが素性を明らかにする「キーワード」の一つ。(これを読んでいる「作家もののうつわ」のお店の方は、できるだけやさしく-やさしくとは、はしょってという意味でもある-教えてあげて下さい。)とにかく「ガー」といろいろ説明してくれても初心者であった僕には理解出来ませんでした。それよりも「すげー口」だとか「人間ってこんなにしゃべれるんだ」と別なことに感心してしまう。
作家はオリジナリティーを身上としているから「〜焼き」という伝統や既存の枠に入らない新しさを求めている。そんな作家さんに「何焼き?」と聞いたら、たぶん、もっとも聞かれたくない言葉の一つじゃないかなぁと、これは奥さんのお言葉。
そんなわけで、作家ものは、〜焼きという伝統工芸に属さないかぎり、何焼きでもないんです。あえて枠で囲むなら、まさに、現代の工芸なわけです。
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